第7回公演「熱海殺人事件〜1973初演版」

2017-10-24


9PROJECT vol.7「熱海殺人事件」

作/つかこうへい  演出/渡辺和徳
出演/小川智之・尾﨑宇内・高野愛・仲道和樹

日程/2018年2月14日〜18日
会場/theater新宿スターフィールド
席種/全席自由席のみ
料金/一般 3,500円・学生 2,500円(どちらも前売・当日とも)


「白鳥の湖」が流れない“つか演出前の熱海”

これは警視庁にその人ありといわれた「くわえ煙草伝兵衛」こと木村伝兵衛部長刑事と、熱血捜査官熊田刑事の心あたたまる感動の物語である。

これは1975年に新潮社から刊行された「熱海殺人事件」の初演版戯曲に書かれた最初の一行です。数あるつか作品の中でも今なお圧倒的な人気を誇り、上演され続ける「熱海〜」シリーズではありますが、この一行を知っている人は少ないのではないでしょうか。1973年に文学座で初演、翌1974年には岸田國士戯曲賞を当時最年少で受賞、つかこうへいの躍進はこの一冊の戯曲から始まったと言っても過言ではありません。その後、無数のバージョンが作られてきましたが、今この“初演版”が上演されることは極めてまれです。

これまで9PROJECTでは「ストリッパー物語」「生涯」「かけおち」「出発」など、70〜80年代のつかこうへい作品を上演し続けてきました。口立てで作られた戯曲にはト書きがほとんどなく、解釈も容易ではありません。しかし私たちは戯曲に一切の脚色をすることなく、ただ真摯に“文字”に向き合っています。決して“つか芝居”の型にはまることなく、どんな表現が可能かを模索し続ける…。つかに直接師事したメンバーだからこそ、一度自分たちの常識を引き剥がして戯曲に向き合うことは“つかこうへい”を理解する上で非常に重要であると私たちは考えています。

「たとえ何十年たとうと、『熱海』は『熱海』の力強さを決して失わないと断言できる」とは、つか自身の弁です。この初演版で、今改めてその“力強さ”を再確認したいと思っています。


CAST

小川 智之/くわえ煙草伝兵衛

2001年、北区つかこうへい劇団に9期生として入団。入団当初よりつかこうへい氏に見いだされ、「蒲田行進曲」(主演:錦織一清)「平壌から来た女刑事」(主演:黒木メイサ)などでつか芝居の常連となる。解散公演「飛龍伝’90」(紀伊国屋サザンシアター)で高野とともに主演を務め上げた後、2014年9PROJECT結成。

尾﨑 宇内(青年団)/熊田留吉

円・演劇研究所を卒業後、劇団 桟敷童子、てがみ座を経て、現在は青年団に所属。主な出演作品として、北九州芸術劇場プロデュース「彼の地」、青年団「南島俘虜記」、映画「日本のいちばん長い日」etc.

高野 愛/ハナ子

2001年、北区つかこうへい劇団に9期生として入団。飛龍伝、熱海殺人事件、蒲田行進曲、二代目はクリスチャンなど、つか作品のヒロインを次々と務める。身体表現を得意とし、舞台上での殺陣やダンスなども高く評価される。

仲道 和樹(劇団PATHOS PACK)/大山金太郎

1990年7月23日生、福岡県出身。俳優・宇梶剛士率いる劇団PATHOS PACKに所属。近年の出演作品は、劇団公演「合言葉」、9PROJECT「堕ちて今、君を想ふ。」、大阪松竹座「七変化ねずみ小僧捕物帳」、映画「野球部員、演劇の舞台に立つ!」


演出/渡辺和徳

9PROJECTで「熱海殺人事件」を上演する。

その企画を決めた時から、バージョンは初演版と決めていました。初期のつか作品を上演してきた9PROJECTがやるなら、これしかない。

もっとも、頭を抱えることは目に見えています。もっとやりやすい、こなれたバージョンはいくらでもあります。初期の「熱海~」でも「定本 熱海殺人事件」なら、つか演出がそのまま使えて随分と楽ができるでしょう。何せこの初演版の時には、まだ「白鳥の湖」も流れていないのです! もっと言えば「南から来た用心棒」も「Let It Be Me」もまだです。音楽が重要な役目を持つつか芝居では、これがいかに致命的なことであるのか、つか作品が好きな人ほど理解できると思います。

でも、だからこそ分かることがある。そのような演出が、なぜ生まれていったのか。つかさんが、何を求めて改変をしていったのか。自分たちの中に染み込み切った「熱海殺人事件」の型を引っぺがして、もう一度理解し直すには、この初演版に立ち向かう以外にありませんでした。そして改めて戯曲を読み返して思うことは、つかこうへいの言葉の力強さは、演出を抜きにしてもいささかも色褪せないということです。

「熱海殺人事件」の原型。

そんなものを上演しようとする酔狂な人間は、そうそういないと思います。怒涛の言葉の奔流を、ぜひ体感しに来てください。

PROFILE

1978 年、東京都生まれ。
北区つかこうへい劇団に入団後、つかこうへいに文才を認められ、氏のもとで作・演出を学ぶ。
2003年、少年隊ミュージカル PLAYZONE「Vacation」で脚本業を開始。以降、演劇作品の脚本、演出を数多く手がける。

【主な脚本作品】
◇青山劇場「SAMURAI 7」「女信長」(原作/佐藤賢一)
◇明治座「神州天馬侠」(原作/吉川英治)「大江戸緋鳥808」(原作/石ノ森章太郎)
◇新国立劇場「AZUMI 幕末編」(原作/小山ゆう)
◇Zeppブルーシアター六本木「あずみ〜戦国編」(原作/小山ゆう)など。


STAFF

舞台監督/久保田智也  照明/三澤裕史(あかり組)  音響/葵能人  宣伝写真/堀内亮太  協力/(株)つかこうへい事務所 青年団 劇団PATHOS PACK